マンション管理費等滞納トラブル~管理組合としての初動(初期対応)について~
- @lawyer.hiramatsu
- 2 日前
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更新日:20 分前
今回は、以下のような質問(本件)について検討します。
私はXマンション管理組合の理事長です。区分所有者(Yさん)は、管理費等を6か月滞納しています。
管理会社から次のように言われています。
「当社と管理組合との管理委託契約上、当社は、Yさんの最初の支払期限から起算して6月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行うことになっています。この督促をしてもYさんがなお滞納管理費等を支払わないときは、当社は業務を終了することになっています。」
私は管理会社の説明に納得できない部分もありますが、管理会社による督促業務が終了した後、管理組合はどうすればよいのでしょうか。
■ はじめに
本件の管理費等は、区分所有者が管理組合に支払うべきものとなっているはずです【※1】。
【※1】マンション標準管理規約(単棟型)25条
(管理費等)
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。
この管理費等の支払請求権を有しているのは管理組合であり、本件の管理会社は管理委託契約に基づき管理組合の業務(事務)を代行しているにすぎないと思われます。
例えば、「マンション標準管理委託契約書」では、管理組合を「甲」、管理会社を「乙」として、「管理費等滞納者に対する督促」について下記【※2】のように定められており、本件の管理委託契約書では下記の「○月」の部分が「6月」となっているものと思われます。
【※2】マンション標準管理委託契約書の別表第1より抜粋
一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。
また、弁護士法72条【※3】との関係でも、管理会社ができることには限界があります。
【※3】弁護士法72条
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一般論として、滞納期間が半年程になると、管理組合が主体的に対応するのが妥当なように思われます。ちなみに、例外的なことが生じている場合【※4】には、半年を待たずに管理組合として対応すべき場合もあります。
理事長としては、管理会社との契約に定められている「6月」という期間が短すぎる(不当である)と感じられているかもしれませんが、その期間設定はあながち不当とはいえません。
本件の滞納問題に関しても管理組合として対応すべき時期に来ているといえます。
【※4】例外的なことが生じている場合の例
① Yさんが行方不明となっており、管理組合として、Yさんの住民票写しの交付を請求【※5】する必要がある場合
② Yさんが死亡していることが判明したものの、Yさんの相続人となるべき人が不明である(不動産登記記録上の所有者情報にも変更がない)ことから、管理組合として、戸籍謄本等の交付を請求【※6】してYさんの相続人となるべき人を調べる必要がある場合
③ Yさんには管理費等の支払意思がないことが明らかな場合
【※5】住民基本台帳法12条の3第1項
(本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)
第12条の3 市町村長は、前2条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項(第7条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第7項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
三 前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者
2~9(略)
【※6】戸籍法10条の2第1項
第10条の2 前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
2~6(略)
■ 補足:マンション標準管理規約(単棟型)67条の2関係
令和6年6月7日改正版のマンション標準管理規約(単棟型)67条の2は下記【※7】のとおりです。皆様のマンションにおいてもそれと同旨の規定を定めておくことをお勧めします。その場合には、マンション標準管理規約(単棟型)54条1項十号【※14】と同旨の規定も加えておいてください。
なお、マンション標準管理規約(単棟型)67条の2関係のコメントは下記【※8】のとおりです。
【※7】マンション標準管理規約(単棟型)67条の2
(区分所有者の所在等の探索)
第67条の2 区分所有者が第31条の規定に違反し必要な届出を行わないことにより、敷地及び共用部分等の管理に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがある場合には、理事長は、理事会の決議を経て、区分所有者の所在等を探索することができる。
2 前項の場合において、理事長は、探索に要した費用について、違約金としての弁護士費用等を加算して、当該区分所有者に請求することができる。
3 前項に定める費用の請求については、第60条第4項の規定を準用する。
4 第2項に基づき請求した弁護士費用等及び探索に要した費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。
【※8】マンション標準管理規約(単棟型)コメント、第67条の2関係
第67条の2関係
① 第1項の敷地及び共用部分等の管理に支障を及ぼす場合とは、管理費等の請求先が不明である場合、総会の成立や決議が困難となる場合、専有部分の管理不全が放置されたことにより共用部分等へ悪影響を与え、住環境の悪化を招いたケースにおいて当該専有部分の区分所有者に対して必要な措置をとることができない場合等が想定される。
② 探索に要した費用とは、次のような費用である。
ア)登記事項証明書や住民票の写し等の交付申請費用及び郵便代等の実費
イ)その他探索に要した費用
③ 管理費等の未払金額の請求に当たり、区分所有者の所在等を探索した場合は、その探索に要した費用を、第60条第2項の規定に基づく徴収の諸費用として請求することも可能である。
■ 管理組合としての初動(初期対応)の一般論
では、管理組合としての初動(初期対応)についてはどうすればよいでしょうか。
まずは請求の相手方を特定(確認)する必要があります。その部屋の所有者が変わっている可能性もゼロではありません。そのため、当該部屋の所有者情報、具体的には不動産登記記録等を確認すべきです。
また、管理会社による督促の状況・結果等を確認すべきです。おそらく、管理会社は、Yさんの届出住所またはYさんの不動産登記記録上の住所もしくはYさん所有部屋宛に督促状を送っていたものと思われますが、実際にそれがYさんに到達しているのか、Yさんと連絡可能なのか等を確認すべきです。管理会社の立場からすれば、督促状況・結果等を管理組合に対し回答(報告)する必要があります(実務的には、適宜、例えば理事会開催の都度、報告されているものと思われます)。
管理会社からの回答(報告)内容によっては、管理組合として、前述【※4】の住民票写しの交付請求【※5】や戸籍謄本等の交付請求【※6】をする必要があるでしょう。
■ いくつかのケースの検討
以下においては、①督促状がYさんに届いているケース、②住民票等を調べてもYさんの住居所が全く分からないケース(いわゆる行方不明のケース)、③Yさんに相続が開始しているケースに分けて検討します。
(1)督促状がYさんに届いているケース
管理会社作成の督促状が実際にYさんに届いている場合(Yさんの所在が判明している場合)、改めて管理組合作成の督促状を発信するだけでYさんが全額支払ってくるとも思えませんが、一応、管理組合名義で督促(配達証明付き内容証明郵便による督促など)してみるのもよいでしょう。
もちろん、そうすることなく、管理組合から弁護士に依頼し、弁護士名で督促(管理組合代理人弁護士名義の内容証明郵便による督促など)するのもよいでしょう。弁護士であれば、Yさんと直接交渉(話し合い)することにも問題ないといえます。ちなみに、理事長個人が滞納者と直接交渉(話し合い)した場合、滞納者のほうから「理事長から脅された」とか「理事長との間で債務の一部免除の和解が成立した」とか勝手な解釈(主張)をされる可能性もあります。
上記のような督促でも奏功しない場合には、管理組合として次のステップすなわち法的措置について検討すべきでしょう。
(2)Yさんの住居所が全く分からないケース(いわゆる行方不明のケース)
Yさんの所在が全く分からない(行方不明である)場合には、督促状をYさんに届けることができません。そこで、管理組合としては法的措置を検討すべきでしょう。
なお、法的措置に移行した場合も、裁判所(書記官)からYさんに対し各種書類(例えば訴状等)を送達する必要が生じますが、その場合の送達は「公示送達」の方法によることになるでしょう。
「公示送達」について
(公示送達の要件)
第110条 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 第107条第1項の規定により送達をすることができない場合
三 外国においてすべき送達について、第108条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四 第108の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2 前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3 同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第1項第四号に掲げる場合は、この限りでない。
(公示送達の方法)
第111条 公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。
(公示送達の効力発生の時期)
第112条 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第110条第3項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、6週間とする。
3 前2項の期間は、短縮することができない。
(3)Yさんに相続が開始しているケース
Yさんが亡くなっている場合(ただし不動産登記記録の変更はない場合)には、前述したように戸籍謄本等を取得して相続人となるべき人を調査する必要があります。
相続人となるべき人が相続放棄している(又はする)可能性がありますので、この点は注意が必要です。
例えば、管理組合としては、Yさんの配偶者(民法890条【※9】)や子(民法887条【※9】)が相続人だと思っていたところ、その人たちは全員相続放棄していたということもあり得ます。その場合、次にYさんの直系尊属に当たる人が相続人となるべき人ということになります(民法889条1項1号【※9】)が、その直系尊属に当たる人も全員相続放棄することもあり得ますし、そうすると次はYさんの兄弟姉妹に当たる人(代襲相続人としての子を含む。)が相続人となるべき人ということになります(民法889条1項2号、同条2項、887条2項【※9】)。
【※9】民法887条、889条、890条
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
上記のような例もあることから、まずは、相続人となるべき人が相続放棄しているかどうかを確認したほうがよいでしょう。そのための方法としては、①相手方(相続人となるべき人)に連絡確認する(場合によっては相続放棄申述受理証明書等を提出してもらう)、②管理組合として家庭裁判所(Yさんの最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に対し相続放棄等の申述有無照会をする方法などが考えられます。
最終的に相続人となるべき人が全員相続放棄したということもあり得ます。
相続人となるべき人がいない場合(相続人不存在の場合)には、管理組合として相続財産清算人選任申立て(民法952条【※10】)を検討することとなります。
【※10】民法951条、952条
(相続財産法人の成立)
第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の清算人の選任)
第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
相続放棄しない相続人が確定した場合、管理組合は、その相続人に対し、未納管理費等の支払を求めることになります。
ここで注意すべきは、数人の相続人がいる場合です。数人の相続人がいる場合には、①相続開始まで(すなわちYさんが死亡するまで)に発生した管理費等支払債務と②相続開始後(つまり相続人が所有者となった以降)の管理費等支払債務を区別する必要があります。
①相続開始までの未納管理費等については相続人(包括承継人)の相続債務の問題となり、「債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するもの」(最高裁昭和34年6月19日判決)と解されていますので、相続人が数人いる場合には、各相続分に応じた債務(【※11】参照)を負うことになります。
これに対し、②相続開始後の管理費等については当該マンションの所有者としての支払義務の問題となり、管理費等支払債務は性質上の不可分債務(東京高裁平成20年5月28日判決等)と解されていますので、各共有者は各自全額の支払義務を負うことになります。
なお、相続人が1人であれば、このような区別をすることなく、その人に全額の支払を求めれば足ります。
【※11】民法900条
(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
前述した①相続人となるべき人への連絡確認、②家庭裁判所への相続放棄等申述有無照会及び③相続人に対する支払請求については、事務的にも煩瑣であり専門的知識も必要となってきますので、そのような場面においては、管理組合から弁護士に依頼するのが一般的といえます。
なお、Yさんの包括承継人たる相続人が管理費等を支払わない場合、管理組合としては法的措置を検討することになります。一般的には管理費等の支払を求める訴訟提起を検討することになるでしょう。
■ 相手方に対する請求内容(相手方に何を請求するのか)
(1)一般論
管理組合は、相手方に対し、何を請求すべきでしょうか。
区分所有者が負担すべき管理費等の内容は、基本的にはXマンションの管理規約に定められているはずです。管理規約に定められている管理費等や使用料、遅延損害金、場合によっては違約金(マンション標準管理規約(単棟型)60条2項【※12】)の支払を求めることとなります。
ところで、マンション標準管理規約(単棟型)25条【※1】には、管理費等として、「管理費」と「修繕積立金」しか記載されていませんが、解釈上の疑義を生じさせないよう、それぞれのマンションに応じて、同25条【※1】に相当する条項に、「駐車場使用料」、「駐輪場使用料」、「水道使用料」、「インターネット使用料」、「協力金」なども明記しておくべきでしょう。
【※12】マンション標準管理規約(単棟型)60条について
(管理費等の徴収)
第60条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から口座振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は別に定める徴収日までに一括して徴収する。ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。
2 組合員が前項の期日までに納入すべき金額を納入しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用等並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。
3 管理組合は、納入すべき金額を納入しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。
4 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
5 収納金が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、管理組合は、理事会の決議により定める弁済の充当の順序に従い、その弁済を充当することができる。
6~7(略)
(2)標準管理規約25条【※1】の定めに関する留意点
前述したように、マンション標準管理規約(単棟型)25条【※1】に相当する条項はそれぞれのマンションに応じた内容にしたほうがよいでしょう。この25条の定め方によっては、次条(マンション標準管理規約(単棟型)26条【※11】)すなわち特定承継人に対する債権行使に関する解釈上の争いを生じさせる可能性もあります。
【※13】マンション標準管理規約(単棟型)26条
(承継人に対する債権の行使)
第26条 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
(3)標準管理規約60条【※12】の定めに関する留意点
Xマンション管理組合からYさんに対する督促に対し、Yさんから一部しか弁済されないこともあり得ます。その場合、管理組合としてはその処理(充当の問題)やその後の請求内容(金額)に混乱が生じる可能性があります。
もちろん、充当合意が成立すればその合意によって処理すれば足りますが、現実的には充当合意を成立させることは容易ではありません。
もし、Xマンションにおいて、標準管理規約(単棟型)60条5項【※12】のような規定が存在しないのであれば、早めにこのような規定を定めておいたほうがよいでしょう。その場合には、マンション標準管理規約(単棟型)54条1項八号【※14】と同旨の規定も加えておいてください。
【※14】マンション標準管理規約(単棟型)54条1項について
(議決事項)
第54条 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
一~七(略)
八 第60条第5項に定める弁済の充当の順序の設定
九(略)
十 第67条の2第1項に定める区分所有者の所在等の探索
十一~十三(略)
2(略)
■ おわりに
今回は、管理組合としての初動(初期対応)について、相手方の特定の問題や相手方に対する請求内容の問題をメインに検討しました。
今回検討した督促によっても相手方からの支払がなさない場合、管理組合としては次のステップすなわち滞納管理費等回収に向けた法的措置を検討する必要があります。
その法的措置に関しては、マンション管理費等滞納トラブル~管理費等債権回収に向けた法的措置について~において検討します。
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