マンション管理組合の総会招集通知について電子メールを利用することができるか〈令和8年(2026)年4月1日施行の改正区分所有法のもとにおいて〉
- @lawyer.hiramatsu
- 23 時間前
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【質問】
私は、マンション管理組合の理事長です。現在、当マンションの理事会で、「総会招集通知(区分所有法35条【※1】)について電子メールを利用して行うことができるか」という点で見解が対立しています。
理事の一人から「区分所有法は電磁的方法による招集通知を許容していない。区分所有法35条【※1】には電磁的方法に関する明文規定が存在しない。区分所有法は、いくつかの場面で電磁的記録や電磁的方法の利用については明文で定めており(例えば、規約の作成に関する30条5項【※2】、議決権行使に関する39条3項【※3】、議事録作成に関する42条4項【※4】、電磁的方法による決議に関する45条【※5】)、また、会社法299条3項【※6】や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団法人法」という。)39条3項【※7】は明文で電磁的方法による通知について定めている。区分所有法35条には電磁的方法に関する明文規定が存在しないということは、電磁的方法による招集通知を許容していないということだ。」との見解が出ています。
私としては、電磁的方法による招集通知も可能であると考えているのですが、いかがでしょうか。【※1】区分所有法35条
(招集の通知)
第35条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しないものを除く。)に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる。
3 第1項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第1項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。【※2】区分所有法30条
(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。【※3】区分所有法39条
(議事)
第39条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面又は代理人によつても行使することができる。この場合において、書面又は代理人によつて議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、当該議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に、それぞれ算入する。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によつて議決権を行使することができる。この場合においては、電磁的方法による議決権の行使を書面による議決権の行使とみなして、同項後段の規定を適用する。【※4】区分所有法42条
(議事録)
第42条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名しなければならない。
4 第2項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の2人が行う法務省令で定める署名に代わる措置を執らなければならない。
5 第33条の規定は、議事録について準用する。【※5】区分所有法45条
(書面又は電磁的方法による決議)
第45条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。次項において同じ。)全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
4 第33条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第1項及び第2項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。【※6】会社法299条
(株主総会の招集の通知)
第299条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間(前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、1週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 株式会社が取締役会設置会社である場合
3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前2項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。【※7】一般社団法人及び一般財団法人に関する法律39条
(社員総会の招集の通知)
第39条 社員総会を招集するには、理事は、社員総会の日の1週間(理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、社員に対してその通知を発しなければならない。ただし、前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合には、社員総会の日の2週間前までにその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第1項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 一般社団法人が理事会設置一般社団法人である場合
3 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、社員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前2項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。■ はじめに
はじめに私見(結論)を述べると、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しておらず、すなわち電磁的方法による招集通知も可能であると考えます。
以下、検討します。
■ 検討
(1)区分所有法35条【※1】について
区分所有法35条には、会社法299条2項【※6】や一般社団法人法39条2項【※7】のような「書面でしなければならない」旨の規定はありません。
会社法299条3項【※6】や一般社団法人法39条3項【※7】は、いずれも「前項の書面による通知の発出に代えて……電磁的方法により通知を発することができる。」と定めています。すなわち、いずれも前項の「書面」を前提に定められた規定です。
他方、区分所有法35条【※1】の招集通知は、もともと「書面」でしなければならないわけではありません。
付言すると、昭和38年4月1日施行の区分所有法28条【※8】や昭和59年1月1日施行の改正区分所有法35条【※9】のもとにおいても、招集通知について書面である必要はないと考えられていました。例えば、昭和58年発行の法務省民事局参事官室編『新しいマンション法一問一答による改正区分所有法の解説』(商事法務研究会)216頁には「通知は、法律上は必ずしも書面でする必要はなく、電話や口頭でも足りますが、一般には、後日の紛争を予防するため、書面に記載して、郵送し、各戸に配布し、又は郵便受けに差し入れるなどの方法によるのが適当でしょう。」と記載されていました。
つまり、従前の区分所有法のもとにおいても書面以外の方法による通知が可能であったといえることから、あえて電磁的方法による通知について明文化する必要もなく、現在の区分所有法35条にも電磁的方法に関する規定は置かれていないということができます。
このような区分所有法35条を理由に、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しているということはできません。
【※8】昭和38年4月1日施行の区分所有法28条
第28条 集会を招集するには、会日より少なくとも5日前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に通知しなければならない。ただし、その日数は、規約で増減することができる。【※9】昭和59年1月1日施行の改正区分所有法35条
(招集の通知)
第35条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる。
3 第1項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第1項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第1項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第17条第1項、第31条第1項、第61条第5項、第62条第1項又は第68条第1項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。(2)区分所有法30条【※2】について
区分所有法30条5項の規定は、平成14年改正(平成15年6月1日施行)により置かれたものです。
その改正前の区分所有法には規約の作成方法に関する明文規定は存在しませんでしたが、規約の保管に関する規定(旧区分所有法33条1項)等との関係で規約の作成は書面によることが前提となっていましたので、電磁的記録による作成を可能とするにはその旨の規定が必要となり、区分所有法30条5項の規定が置かれたものといえます。
このような区分所有法30条5項の規定を理由に、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しているということはできません。
(3)区分所有法39条【※3】について
まず、区分所有法39条2項は、「書面」による議決権の行使について規定しています。すなわち、同項は「書面」が前提となっています。
それ以外の方法(電磁的方法)による議決権行使を認めるには、その旨の規定が必要です。
そこで、平成14年改正(平成15年6月1日施行)により電磁的方法による議決権行使の規定(3項)が置かれています。
このような区分所有法39条3項の規定を理由に、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しているということはできません。
(4)区分所有法42条【※4】について
区分所有法42条1項の「電磁的記録」に関する規定は平成14年改正(平成15年6月1日施行)により置かれたものです。
その改正前の区分所有法42条1項は、「集会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。」とされており、その保管に関する規定(規約の保管の規定の準用)等との関係で、議事録の作成は書面が前提となっていましたので、電磁的記録による作成を可能とするにはその旨の規定が必要となり、平成14年改正(平成15年6月1日施行)によりその旨の規定が置かれています。
このような区分所有法42条の規定を理由に、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しているということはできません。
(5)区分所有法45条【※5】について
もともと昭和59年1月1日施行の改正区分所有法45条は、1項において「この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面による合意があつたときは、集会の決議があつたものとみなす。」とされており、2項で「第33条の規定は、前項の書面に準用する。」とされていました。
その後、平成14年改正(平成15年6月1日施行)の区分所有法45条2項の規定により、区分所有者全員の合意(全員一致)については「書面」だけでなく「電磁的方法」によることも可能となりました。
なお、平成14年改正区分所有法45条1項の規定により、区分所有者全員の承諾があるときは、集会を開催することなく、区分所有者の書面または電磁的方法による議決権行使によって決議が行えるようにもなりました。
このような区分所有法45条の規定を理由に、区分所有法は電磁的方法による招集通知を禁止しているということはできません。
■ まとめ
以上のとおり、区分所有法は、電磁的方法による招集通知を禁止しているわけではありません。そのため電磁的方法による招集通知も可能であるといえます。
ただし、そうだとしても理事会内部あるいは管理組合内部でいろんな意見が出てくるでしょうから、あらかじめ管理規約や細則において電磁的方法による招集通知に関するルールを明確に定めておくべきでしょう。
なお、電子メールによる招集通知は、それを希望する者(管理組合に対し宛先メールアドレスを届け出た組合員)に対して行うべきであり、また、運用上の注意点として、添付ファイル(PDF等)を含め確実に宛先に送信されていることを確認すべきです。電子メールは何からの事情により送受信できない(受信者側で開封できない)こともありますので注意が必要です。
(弁護士/平松英樹)
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