top of page

別荘地における土地所有者に対する区分所有法の規定の適用について

  • @lawyer.hiramatsu
  • 5月5日
  • 読了時間: 7分

 【質問】

 団地【※1】と言ってもよいような別荘地内の土地(別荘地を購入してから現在まで更地のまま)の所有者に対し、区分所有法の規律を及ぼすことは可能でしょうか。具体的には、区分所有法65条【※2】でいう団体で定める規約を根拠として、その土地所有者に対し、管理費等の支払を求めることは可能でしょうか。

 【※1】団地とは

 ご質問者が言う「団地」の意義は明確ではありませんが、一般に、「団地」とは、「客観的に一区画をなしていると認められる土地の区域を指称する」ともいわれています。ただし、これも明確な概念とはいえません(『建物区分所有法の改正』濱﨑恭生著(法曹会、1989年)418頁参照)。
 そこで、本稿においては(ご質問者の用法とは異なるかもしれませんが)、数棟の建物の所有者が土地または附属施設を共有(またはこれらに関する権利を準共有)することによって関係づけられているときのその区域を「団地」ということにします。

 【※2】区分所有法65条

(団地建物所有者の団体)
第65条 一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

■ はじめに


 はじめに結論を述べると、ご質問(以下「本件」といいます。)にある土地所有者は、区分所有法65条【※2】でいう「団体」の構成員に該当しませんので、「団体」が、区分所有法上の「規約」を根拠として、その土地所有者に対し管理費等の支払を求めることはできないといえます。


■ 解説


 区分所有法(本稿において令和8年4月1日施行の改正区分所有法を指します。)は、第一章で「建物の区分所有」について規定し、第二章(65条~71条)で「団地」について規定しています。なお、第三章で「建物が滅失した場合における措置」、第四章で「所在等不明区分所有者等の除外等に関する裁判手続」、第五章で「罰則」について規定しています。


 区分所有法65条【※2】は、団地建物所有者の団体が成立する要件を定めるとともに、当該団体が成立する場合には、区分所有法の定めにより、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる旨を規定しています。

 区分所有法66条は、第一章の「建物の区分所有」に関する規定のうち準用されるものを掲げると共に、字句の読み替えについて定めています。


 団地建物所有者の団体が当然に管理すべき物は、その共有に属する土地または附属施設ということになります(65条)。一定の土地または附属施設あるいは区分所有建物(専有部分のある建物)は、区分所有法68条【※3】が定める手続きに従い規約を設定することで団地建物所有者全員の団体の管理に服させる(団地建物所有者全員の管理対象物とする)ことが可能です。ただし、戸建ての所有者のみの共有に属する土地または附属施設は、同条1項一号末尾の括弧書きにより、規約設定の特例から除外されていますので、一部の戸建て所有者の共有に属するにすぎない土地または附属施設については団地建物所有者全員の団体による管理に服させることはできません。


 【※3】区分所有法68条

(規約の設定の特例)
第68条 次の物につき第66条において準用する第30条第1項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の4分の3以上の者であつてその持分の4分の3以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第34条の規定による集会における出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項(第一号を除く。)において同じ。)及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議(区分所有者の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席してされたものに限る。)があることを要する。
 一 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
 二 当該団地内の専有部分のある建物
2 第31条第2項の規定は、前項第二号に掲げる建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての同項の集会の決議に準用する。

 まとめると、区分所有法65条の規定により、一団地内に数棟の建物があり、その団地内の土地または附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物所有者の共有に属する場合には、当然に、当該数棟の建物所有者全員によって、当該土地または附属施設の管理を行うための団体を構成し、区分所有法の定めるところにより規約を定めることができます。そこでいう「建物」は、区分所有建物であってもよく、それ以外の建物(いわゆる戸建て)であっても構いませんので、団地関係は、区分所有建物のみで構成される場合もあれば、それ以外の建物のみで構成される場合もあり、またはその両者が混在して構成される場合もあります。


 本件についてみると、実際に区分所有法上の団地関係が構成されているといえるかどうかは不明ですが、その点はさて措き、少なくとも本件の土地所有者は区分所有法65条で定義する「団地建物所有者」には該当しませんので、同条が定める団体の構成員ではありません。

 したがって、当該土地所有者に対し、団体で定める規約を根拠として管理費等の支払を求めることはできないといえます。

 もっとも、土地所有者は、区分所有法上の規約を根拠とする管理費等支払義務を負わないとしても、民法の規定(共有物に関する規定)を根拠とする管理費用(民法253条)を負担したり、当該土地所有者と特定の者(例えば管理会社)との間の契約(準委任契約等)を根拠とする管理費等を負担したりすることはあり得るでしょう。ただし、それは区分所有法の規律による効果ではなく、民法の規律による効果ということになります。


■ おわりに


 別荘地においては、別荘地の管理会社と土地所有者間で、土地所有者が負担すべき管理費等についてトラブルになることが少なくありません。

 今回のご質問の背景にも、分譲別荘地(一定の区域)内において分譲主(ないし承継会社)所有となっている道路や施設等の管理費負担を巡るトラブルが存在しているのかもしれません。

 別荘地の管理費負担を巡る裁判例も多数存在しており、裁判においては、①管理会社と土地所有者間の契約(黙示の契約を含む。)の成否、②管理会社と土地所有者間で成立していた契約の解約(解消)の可否、そして、③管理会社と土地所有者間で契約の成立が認められない場合における管理会社から土地所有者に対する不当利得返還請求の可否等が問題となったりします。

 ①もし契約の成立が認められるのであれば、管理会社は、土地所有者に対し、その契約に基づく義務の履行(約定の管理費等の支払)を求めることが可能です。

 ②ただし、その契約の性質が準委任契約と解される場合には、土地所有者側からの民法656条・651条1項に基づく契約解除の可否が問題となります。この問題に関しては、東京高裁平成28年1月19日判決を押さえておく必要があります。

 ③仮に契約関係が存在しない場合には、管理会社から土地所有者に対する不当利得返還請求の可否が問題となります。この問題に関しては、令和7年6月30日に最高裁第一小法廷にて二つの判決(令和5年(受)第2461号事件の判決、令和6年(受)第1067号事件の判決)が出されています。この二つの判決の結論は、いずれも、土地所有者は管理会社に対し管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うとされたものですが、この判決は非常に重要なので、改めて別の回で解説することとします。


(弁護士/平松英樹)


 
 
 

最新記事

すべて表示
マンション管理組合の総会招集通知について電子メールを利用することができるか〈令和8年(2026)年4月1日施行の改正区分所有法のもとにおいて〉

【質問】  私は、マンション管理組合の理事長です。現在、当マンションの理事会で、「総会招集通知(区分所有法35条【※1】)について電子メールを利用して行うことができるか」という点で見解が対立しています。  理事の一人から「区分所有法は電磁的方法による招集通知を許容していない。区分所有法35条【※1】には電磁的方法に関する明文規定が存在しない。区分所有法は、いくつかの場面で電磁的記録や電磁的方法の利

 
 
 
令和8(2026)年4月1日施行の改正区分所有法6条2項について

令和8(2026)年4月1日施行の改正区分所有法6条2項について教えてください。改正前は「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。」とされていましたが、改正後は「区分所有者は、その

 
 
 
管理不全専有部分管理命令について

私は、管理組合の理事長です。令和8年4月1日施行の改正区分所有法との関係で教えてください。  ある区分所有者(以下「Y」といいます。)が専用使用しているバルコニー内に大量のゴミを置いており、上階や隣接する部屋の居住者が悪臭等で困っています。ただし、Yさんは「ゴミではない」と主張し続けており、全く協力してくれません。  管理組合は、改正区分所有法に基づく「管理不全専有部分管理人」(以下「管理人」とい

 
 
 

コメント


bottom of page