駐車場区分所有者の議決権を認めない旨の管理規約の定めについて
- @lawyer.hiramatsu
- 13 分前
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【質問】
私は、マンション管理組合の理事長です。当マンションには専有部分(登記あり)としての駐車場があります。その駐車場の所有者は別の住戸(専有部分)の区分所有者でもあります。
当マンションの管理規約上、(原始規約の時点から)駐車場所有者の議決権は認められていません。なお、駐車場以外の専有部分についてはそれぞれ1議決権が認められています。
この度、駐車場所有者から、「駐車場にも議決権が認められるべきである。駐車場所有者に議決権を認めていない規約の定めは無効である。」というクレームが出ています。
駐車場所有者が述べるように、そのような規約は無効なのでしょうか。■ はじめに
駐車場所有者の言い分は、「区分所有法38条は、『各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第14条に定める割合による。』と規定しているが、駐車場所有者の議決権を認めない(ゼロにする)ことはできない。」というものなのでしょう。
ご質問のマンションの背景事情(事実関係)は定かではありませんが、先に結論(私見)を述べると、事実関係によっては、駐車場の区分所有者の議決権を認めない(ゼロにする)旨の規約の定めも有効であると考えます。
■ 解説(私見)
区分所有法38条は、「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第14条に定める割合による。」と規定していますが、問題は、その規約の「別段の定め」がどこまで許容されるのかということです。
規約の「別段の定め」については、当然ながら区分所有法30条の規定が適用されます【※1】。
そのため、「別段の定め」が区分所有法30条3項に反する(無効となる)こともあれば、同法30条3項に反しない(無効とならない)こともあります。
【※1】区分所有法30条
(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。無効となるかどうかはケースバイケースと言わざるを得ませんが、例えば、住戸と駐車場が一体のものとして売買されることがもともと想定されているマンションでは、一概に無効となるものではないでしょう。
この点について参考となる裁判例(東京地判令和5年12月8日)【※2】を紹介しておきます。この事案は、複数台の車両が駐車できる地下駐車場(複数人の共有となっている専有部分)の議決権を認めていない規約の有効性が問題となったものです。
【※2】東京地判令和5年12月8日(2023WLJPCA12088010)
まず、①関連する規約の規定等を見ると、本件駐車場部分の持分については、住戸又は店舗部分と分離して譲渡するには理事会の承認が必要とされており、併せて、本件駐車場部分に関する客観的な構造を見ても、駐車場は周辺に他の共用設備等が種々配置された地下部分に存在する。これらの点から、本件駐車場部分の持分は、通常は他の区分所有権の保有者が取得し、他の区分所有権と一体として管理、使用することが想定されていたことは明らかと言うべきであり、他の区分所有権と全く別に譲渡されることは想定し難い。
併せて、②本件駐車場部分の管理費等は、他の区分所有権と比較して、分譲当時に近接した時期には最低額と比べても10分の1以下、直近の時点でも同様に2分の1以下と、相当低額に定められている。関連して、分譲時の価格も、本件駐車場の持分については他の区分所有権より相当低額であったことがうかがわれる。これらの点も、本件駐車場の持分が他の区分所有権と独立して取得されるものではなく、通常は一体のものと扱われることをうかがわせる。
そして、③本件駐車場の持分の保有者と他の区分所有権の保有者とが実際に一致していたかどうかについて見ても、本件記録に現れた限りで、譲渡の経過まで厳密に一致していたかはともかく、概ね上記持分の保有者が他の区分所有権も保有していた経過がうかがわれる。例外となるのは、他の区分所有権を配偶者が保有していた点と、上記持分を被告(管理組合法人)が取得した場合程度であり、議決権行使との関係で重要な例外であるとは解されない。
また、本件駐車場部分に関する客観的構造と併せて、分譲当時の経過を見ても、分譲の当初には駐車場と他の区分所有権の取得者は一致していたし、チラシ等の内容も、法的に正確であったかはともかく、駐車場が他の共用部分等と併せた設備の一環であることを示すような内容であったことがうかがわれる。
これらの点からも、本件駐車場部分の取得者らが、本件駐車場部分について他の区分所有権とは独立した権利・利益を得られるものと期待していたなどとは考え難く、これらを一体のものとすることは当然認識していたか、少なくとも認識可能であったと解される。
なお、分譲当初の売買契約証書の内容を見ると、上記のような本件駐車場の持分と他の区分所有権との一体性や、これに関連する本件駐車場の持分取得者の権利・利益等について、契約の文言自体には明記されていないこととなる。しかし、前記のような規約の内容、管理費等の負担、客観的構造といった、区分所有者全体の利害に関わる客観的かつ重要な事項に照らせば、契約の文言自体に明記されていなかったからといって、上記のような一体性の認識又はその可能性が否定されるものとは解されない。
以上のような規約の定め、管理費等の負担、関連する客観的構造や使用・管理に関する状況、関係者の認識や期待等の事情に照らせば、本件駐車場部分の区分所有権について議決権行使を認めなくとも、その不利益は、これと通常一体として保有・管理されるはずである他の区分所有権により議決権行使を認めることによって対処されることが想定されており、重大な不利益ではないものと言うべきである。
特定の区分所有者に何らの議決権行使を認めないことが原則的には不当な侵害の疑いが強いことを考慮しても、区分所有者間の利害の衡平(同法30条3項)に反するとまでは評価できないと言うべきである。
■ おわりに
今回は、駐車場区分所有者の議決権について検討しました。
マンションによっては、トランクルーム(物置)や倉庫が専有部分として登記されているところ(規約上、トランクルームや倉庫の議決権を認めていないところ)もあるでしょう。
そのようなマンションでも、ご質問にあるようなクレームが出ることがあるかもしれません。
その場合にも前記の解説で示した判断枠組みが当てはまると考えられますので、結論として、当該専有部分について議決権を認めない旨の規約の定めは有効とされるケースが多いでしょう。
(弁護士/平松英樹)
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