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マンション管理:管理規約の閲覧謄写請求について

 今回は、以下のようなご質問について検討します。

 当マンションの管理規約には、「規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない」旨の規定があります。
 この度、区分所有者から、最初の管理規約(原始規約)から現在の管理規約(現行規約)までの全ての規約原本の閲覧謄写請求が書面でなされました。
 上記請求に対する管理組合側の義務について、どのように考えるべきでしょうか。

■ 問題の所在


 上記区分所有者からの請求については以下の2つの論点が含まれています。

 (1)謄写請求権の有無

 (2)閲覧させなければならない規約の意義



■ 論点(1)謄写請求権の有無について


 謄写請求権の有無については東京高裁令和4年3月9日判決が参考になります。

 「集会(総会)議事録等の謄写請求権(派生論点:管理者は、管理組合の事務処理の結果について、個々の組合員に直接報告すべき義務があるのか)について」をご参照ください。


■ 論点(2)閲覧させなければならない規約の意義について


 閲覧させなければならない規約の意義についても東京高裁令和4年3月9日判決が参考になります。

 なお、裁判所は概ね以下のような判断を示しています(注:筆者により加筆修正)。

 区分所有法33条2項【※】及び規約●条(「規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。」)が、規約について利害関係人等からの閲覧請求を認めているのは、区分所有者及びそれ以外の利害関係人に影響を及ぼすことから、閲覧が保障されなければならないのがその趣旨であるところ、上記の趣旨に鑑みれば、区分所有法33条2項【※】の「規約」及び規約●条の「規約原本」とは、現に効力を有している規約と解するのが相当である。
 管理組合においては、改正をした管理組合規約に理事長名で現行管理規約に相違ない旨の記名押印をして原本として規約原本を管理していることが認められ、かかる方法による管理も管理方法として相当であると解されるから、区分所有者は現に効力を有している現行規約以外の規約及びその改正履歴の閲覧を請求することはできない。

■ 結論


 一般的なケースにおいては、上記裁判例のケースのように、管理組合理事長側としては、(1)区分所有者からの謄写請求に応じる義務はなく、(2)現に効力を有している現行規約を閲覧させれば足りるということになります。


 【※】区分所有法33条

(規約の保管及び閲覧)
第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

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