• @lawyer.hiramatsu

マンション管理:監事が招集する臨時総会における議題提出について

 今回は、以下のようなご質問について考えてみましょう。


■ 質問


 私たちのマンションの管理規約には、「監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。」、「監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。」という規定が存在します。その規定に基づき監事が総会を招集する場合、監事は、報告だけでなく議題(例えば理事解任の議題)を提出することは可能でしょうか。



■ 回答


 ご質問の管理規約の規定に基づく監事招集臨時総会において、「報告」だけでなく、その対応策としての事項(議題)を提出することも可能と考えます【※注意】。

 この点については、後記の裁判例(地位保全仮処分命令申立事件に関する前橋地裁平成30年5月22日決定・東京高裁平成30年9月25日決定における裁判所の判断)が参考になります。

 

【※注意】

 監事が招集する総会の議長については「監事が務める」旨の規約の定めがあれば別ですが、そのような定めがない場合、総会の議長を誰が務めるべきかを巡りトラブルになる可能性があります。「弁護士平松英樹のマンション管理論」監事が招集する総会や理事会の議長について(2017/7/25)参照。

 この点、組合員の総会招集権(マンション標準管理規約(単棟型)44条参照)の規定に基づく臨時総会であれば、ご質問のような議題提出の可否を巡るトラブルや総会議長(同規約第44条3項参照)の解釈を巡るトラブルを回避できるでしょう。

 また、監事作成文書の記載(表現)が、特定の人(例えば、解任対象の理事)の名誉を毀損したとしてトラブルになることもありますので、この点も注意が必要です。「管理組合内部における名誉毀損トラブル」参照。



■ 参考裁判例


 前橋地裁平成30年5月22日決定(出典:ウエストロー・ジャパン)

 確かに、法によると、監事については、理事の業務の執行の状況を監査し、財産状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告し、その報告のために必要があるときは、集会を招集すること等が職務とされ(50条3項)、監事が招集する集会における集会の目的たる事項(議題)としては報告に限られると考えられる。
  しかし、上記法の規定は強行法規ではなく、各管理組合法人の規約において、これと異なる規定を置くことも許されると解されるところ、本件規約においては、監事は、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならず、監事は、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができるとされ(37条1項、2項)、監事が総会を招集することができる場合について、報告のために必要があるときに限定されていない。これは、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況について不正があると認める場合、喫緊に対応策を講じなければならない状況であるから、監事が、総会を招集するにあたり、不正な業務執行等の報告を議題として提出できるのみならず、不正な業務執行等に関わる理事の解任等自ら対応策として必要と考える議題も適宜提案できる趣旨であると考えられる。したがって、監事は、本件規約上、招集予定の総会において、自ら必要と考える理事解任の議案を提出し、その決議を求めることもできるというべきである。


 東京高裁平成30年9月25日決定(出典:ウエストロー・ジャパン)

 …区分所有法50条3項4号は、同項3号が「財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること」を監事の職務としていることを受けて、同号の「報告をするため必要があるとき」に集会を招集することを監事の職務として規定しているところ、本件規約37条2項は、上記区分所有法の定める場合にとどまらず、「管理組合法人の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるとき」に臨時総会を招集することができるものとしており、文言上、同条1項の報告をするために(必要があるときは)といった限定はされていないのであって、相手方の監事が臨時総会を招集し得る場合は、区分所有法の定める監事が集会を招集し得る場合よりも拡張されているとみることもできるから、区分所有法50条3項の構造と本件規約37条の構造が全く同一であるということはできず、抗告人の主張はその前提を欠くものであるというほかない。かえって、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況について不正があると認められる場合には喫緊に対応策を講じなければならない状況にあるということもできるところ、本件規約39条は、総会を招集するには原則としてその目的を事前に組合員に通知しなければならないとしているから、監事が臨時総会を招集する場合にもその目的を事前に組合員に知らせることになることも考えると、監事に臨時総会を招集して不正な業務執行等の報告をする権限だけでなく、必要があれば不正な業務執行等に対する対応策として自らの考える議題も併せて提案し、招集する臨時総会においてその賛否を問うという権限を与えることも管理規約を定めるに当たって管理組合法人の採り得るところというべきである。これらの点を考慮すれば、本件規約上、監事は、自らが招集する予定の総会において理事解任の議案を提出し、その決議を求めることもできると解することもできる…


最新記事

すべて表示

規約・集会議事録の閲覧請求権については、「マンション管理:利害関係人の規約・集会議事録の閲覧請求と管理者(理事長)の閲覧拒絶について」でも取り上げましたが、今回は、規約・集会議事録の謄写請求権について検討してみましょう。 ■ 検討 まず、区分所有法上は、閲覧請求のみ規定し、謄写請求の規定はありません。また、多くの管理組合においても、管理規約で閲覧請求のみを認め、謄写請求については認めておりません。

今回は、借地借家法22条〜24条【※1】の規定に基づく借地権(広義の定期借地権)について確認します。 ■ はじめに 定期借地権の制度は、1992年8月1日施行の借地借家法により創設されました。その後、借地借家法の一部を改正する法律(2008年1月1日施行)により現在の内容【※1】となっています。 なお、1992年8月1日施行時の条文は後記【※2】のとおりです。現在の条文【※1】と以前の条文【※2】

今回は、普通借地権(以下、単に「借地権」といいます。)を前提として【※1】、借地権の存続期間や借地上の建物の建替えについて検討します。 はじめに旧借地法下で設定された借地権に適用される規律を確認します。 次に、借地権の存続期間について、「旧借地法下で設定された借地権」と「現在の借地借家法下で設定された借地権」とを区別し、それぞれの「当初の存続期間」、「更新後の存続期間」を確認し整理していきます。