top of page
  • @lawyer.hiramatsu

一部の区分所有者(一部共用部分の区分所有者)で定める規約と区分所有者全員で定める規約との関係

 今回は以下のような質問について検討します。

 一部共用部分の区分所有者で定めている規約を、区分所有者全員で定める規約をもって変更・廃止することはできますか。

■ 結論

 

結論としては「できる」と考えます。ただし、後述するとおり注意が必要です。


■ 検討


(1)一部共用部分の管理


 まず、区分所有法3条【※1】や16条【※2】について確認しておく必要があります。

 区分所有法3条後段については、「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(つまり一部共用部分)をそれらの区分所有者が管理するとき」は、その一部の区分所有者は全員で、当該一部共用部分の管理を行うための団体を構成し、この法律(つまり区分所有法)の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」と読むことができます。

 そうすると、「一部共用部分が存在しても、16条の規定によりその管理のすべてを区分所有者全員で、すなわち本条(注:3条)前段の団体で行うときは、同条(注:3条)後段の団体は構成されない。」(『建物区分所有法の改正』濱﨑恭生著(法曹会、1989年)111頁)と解することができるでしょう。

 なお、16条に規定する「管理」とは、広義の管理を指し、つまり、18条の共用部分の管理(狭義の管理、保存行為)のほか、共用部分の変更(17条)も含みます。この点については、別稿の一部共用部分(区分所有法3条)と関連する区分所有法11条、14条、16条及び20条の規定についてをご参照ください。


 【※1】区分所有法3条

(区分所有者の団体)
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 【※2】区分所有法16条

(一部共用部分の管理)
第16条 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第31条第2項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。

(2)一部の区分所有者のみによる管理


 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき一部の区分所有者の規約で定めることができます。

 詳述すると、まず、区分所有者全員の利害に関係する管理は、当然に区分所有者全員で行い、一部の区分所有者(3条後段の団体)で行うことはできません(区分所有法30条2項参照【※3】)。

 また、区分所有者全員の利害に関係しないものであっても、区分所有者全員の規約に定めがあるものは区分所有者全員で管理を行うことになります(区分所有法16条)ので、一部の区分所有者(3条後段の団体)で管理を行うことはできません。

 そうすると、一部の区分所有者のみで行う管理は、区分所有者全員の利害に関係しないもので、かつ、区分所有者全員の規約に定めがないものに限られます。


 なお、区分所有者全員の利害に関係しないもので、かつ、区分所有者全員の規約による定めがない一部共用部分の管理について、一部区分所有者の団体が行った決議と区分所有者全員が行った決議があり、その決議が矛盾する場合には、 後者の決議はその限りで無効であるものと解されます(『コンメンタール マンション区分所有法(第3版)』稻本洋之介・鎌野邦樹著(日本評論社、2015年)32頁参照)。


(3)まとめ


 ご質問は、「一部共用部分の区分所有者で定めている規約を、区分所有者全員で定める規約をもって変更・廃止することはできますか」というものです。

 実務的には、一部の区分所有者のみで行う管理に関し、区分所有者全員で定めた規約の中に一部の区分所有者の規約が組み込まれているケース(形式的には1冊の管理規約があるケース)や、区分所有者全員で定めた規約とは別に一部の区分所有者の規約が存在しているケース(形式的に複数の管理規約があるケース)が考えられます。

 おそらく、ご質問は後者のケースだと思われますが、私見としては、いずれのケースであっても、①区分所有法30条3項の要件【※3】をクリアーすることはもちろんのこと、②区分所有法31条2項の要件【※4】をクリアーし、かつ③同条1項の要件【※4】をクリアーするのであれば、一部の区分所有者の規約で定めた事項について、区分所有者全員の規約で変更・廃止することもできると考えます(『コンメンタール マンション区分所有法(第3版)』稻本洋之介・鎌野邦樹著(日本評論社、2015年)187頁、『建物区分所有法の改正』濱﨑恭生著(法曹会、1989年)239頁【※5】参照)。


 【※3】区分所有法30条

(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

 【※4】区分所有法31条

(規約の設定、変更及び廃止)
第31条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第2項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者又はその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 【※5】『建物区分所有法の改正』濱﨑恭生著(法曹会、1989年)239頁より

・・・一部の区分所有者の規約で定めた事項について、区分所有者全員の規約でこれと異なる定めをし、又はこれを改廃することができるかどうかが問題であるが、今回の改正(筆者注:昭和58年改正)の趣旨は、一部の区分所有者の意思をも尊重しつつ(31条2項)、区分所有者全員の多数意思をもって一部共用部分の管理を区分所有者全員で行うことを認めることにあるのであるから、この問題は積極に解すべきである(区分所有者全員の規約で異なる定めがされたときは、これに抵触する限度で一部の区分所有者の規約は効力を失うことになる。)。



最新記事

すべて表示

一部共用部分(区分所有法3条後段)と関連する区分所有法11条、14条、16条及び20条の規定について

今回は以下のような疑問について検討します。 一部共用部分(区分所有法3条後段)【※1】と関連すると思われる区分所有法11条【※2】、14条【※3】、16条【※4】及び20条【※5】の関係がよく分かりません。  たとえば、以下の関係についてどのように考えればよいのでしょうか。 (1)3条後段【※1】と11条2項【※2】の関係 (2)11条2項【※2】と20条【※5】の関係 (3)16条【※4】と20

一部共用部分(区分所有法3条)について~区分所有法11条、14条、16条及び20条との関係~

今回は以下のような質問について検討します。 一部共用部分(区分所有法3条【※1】)については、規約の定めをもって広げたり狭めたりすることができますか。  区分所有法11条2項【※2】は、前項の規定(11条1項の規定)は、「規約で別段の定めをすることを妨げない。」と定めています。  そうすると、規約の定めによって、一部共用部分の範囲を定めることができるのではないでしょうか。 【※1】区分所有法3条

破産財団に関する訴訟(区分所有法59条に基づく競売請求訴訟)と破産手続開始決定との関係

今回は以下のようなご質問(「本件」といいます。)について検討します。 区分所有法59条に基づく競売請求訴訟の係属中に、被告の区分所有者(自然人)に対し破産手続開始決定がなされた場合、係属中の訴訟はどうなりますか。 ■ はじめに 1 原則論 破産法44条1項【※1】は、破産手続開始決定時に係属する「破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は、中断する。」と規定しています。 区分所有法59条に基づ

Comments


bottom of page