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マンション管理:規約による別段の定めの有効性について

  • @lawyer.hiramatsu
  • 2022年8月14日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年12月13日

 今回は、以下のようなご質問について検討します。

 当マンションの管理規約には、①「規約の設定、変更又は廃止は、組合員の3分の2以上で決する。」旨の定めがあります。また、②「組合管理部分に関する管理委託契約の締結は、組合員の3分の2以上で決する。」旨の定めがあります。
上記①や②の定めは有効でしょうか。

■ ご質問の上記①の定めについて


1 結論

 無効です。


2 理由

 区分所有法31条1項本文【※1】は、「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする。」と定めています。


 【※1】区分所有法31条

(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 この「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数」という要件について、規約で別段の定めをすることは許されません(いわゆる強行規定)。

 したがって、ご質問の①の定めについては無効であり、規約の設定、変更又は廃止については、区分所有法31条1項本文の定めに従い、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で決する必要があります。


■ ご質問の上記②の定めについて


1 結論

 有効です。

2 理由

 組合管理部分に関する管理委託契約の締結は、いわゆる狭義の管理事項(区分所有法18条1項本文)【※2】として「集会の決議」(普通決議)で決することになりますが、この決議については規約で別段の定めをすることが許されます(区分所有法18条2項)【※2】。


 【※2】区分所有法18条

(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 つまり、規約に別段の定めがない場合には「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」(区分所有法39条1項)ことになりますが、規約に別段の定めがあればその定めに従います。

 例えば、マンション標準管理規約(単棟型)第47条2項【※3】のように、普通決議の要件を緩和することも許されます。また、普通決議の要件を加重することも(その妥当性はさておき)法的には許されます。


 【※3】マンション標準管理規約(単棟型)第47条

(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
(以下略)

 ご質問の上記②の定めについては、組合員数(区分所有者数)のみを決議要件とし、議決権数については決議要件から除外している(すなわち、組合員数の要件を加重し、議決権数の要件を緩和している。)ものと解されますが、このような定めも法的には許されます。

 したがって、上記②の定めについては有効であり、組合管理部分に関する管理委託契約の締結は、当該規約の定めに従い、組合員の3分の2以上で決することになります。

 

 

 


 
 
 

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