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  • @lawyer.hiramatsu

マンション管理:時効期間経過後の一部弁済

更新日:2023年12月13日

 前回は一部弁済による時効の更新について検討しましたが、今回は以下のようなご質問について検討します。

 当マンションには管理費等の滞納者がいます。滞納期間は5年を過ぎました。滞納期間5年を過ぎた後、1か月分だけの管理費等の支払(弁済)がなされたとします。この弁済によって、5年が経過した管理費等についての時効利益が放棄されたと解釈してもよいでしょうか(民法146条の反対解釈【※1】)。

 【※1】改正民法146条

(時効の利益の放棄)
第146条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

■ 検討


 ①現在を2023年7月10日であるとし、②管理費等の支払期限は、管理規約上、毎月「27日」となっているものとし、③2018年6月27日支払期限分以降の管理費等が未納になっているという前提で検討します。

 管理費等の消滅時効期間は5年なので、滞納者としては、現時点(2023年7月10日時点)で時効が完成している(5年が経過している)2018年6月27日支払期限分の管理費等の時効を援用することができます。

 もちろん、滞納者は時効利益を放棄することも可能です【※1】が、放棄するには時効が完成していることを知っている必要があります。

 滞納者において時効が完成していることを知らないで一部弁済している場合、時効援用権(形成権)の放棄(意思表示)がなされたとまではいえないでしょう。ただし、その後に時効援用権を行使できるというのでは結論の妥当性に問題が生じます。

 そこで、時効完成後の承認がある場合には(なお、「承認」に該当するかどうかは前回同様の検討が必要です。)、「信義則」を根拠として、その後の時効の援用は認められないと考えるべきことになります(最高裁昭和41年4月20日判決【※2】、最高裁昭和45年5月21日判決【※3】参照)。


 【※2】最高裁昭和41年4月20日判決

 案ずるに、債務者は、消滅時効が完成したのちに債務の承認をする場合には、その時効完成の事実を知っているのはむしろ異例で、知らないのが通常であるといえるから、債務者が商人の場合でも、消滅時効完成後に当該債務の承認をした事実から右承認は時効が完成したことを知ってされたものであると推定することは許されないものと解するのが相当である。したがって、右と見解を異にする当裁判所の判例(昭和35年6月23日言渡第一小法廷判決、民集14巻8号1498頁参照)は、これを変更すべきものと認める。しからば、原判決が、上告人は商人であり、本件債務について時効が完成したのちその承認をした事実を確定したうえ、これを前提として、上告人は本件債務について時効の完成したことを知りながら右承認をし、右債務について時効の利益を放棄したものと推定したのは、経験則に反する推定をしたものというべきである。しかしながら、債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。また、かく解しても、永続した社会秩序の維持を目的とする時効制度の存在理由に反するものでもない。

 【※3】最高裁昭和45年5月21日判決

債務者が消滅時効の完成後に債権者に対し当該債務を承認した場合には、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効の援用をすることが許されないことは、当裁判所の判例の示すところであるけれども(最高裁判所昭和37年(オ)第1316号同41年4月20日大法廷判決、民集20巻4号702参照)、右は、すでに経過した時効期間について消滅時効を援用しえないというに止まり、その承認以後再び時効期間の進行することをも否定するものではない。けだし、民法157条が時効中断後にもあらたに時効の進行することを規定し、さらに同法174条ノ2が判決確定後もあらたに時効が進行することを規定していることと対比して考えれば、時効完成後であるからといって債務の承認後は再び時効が進行しないと解することは、彼此権衡を失するものというべきであり、また、時効完成後の債務の承認がその実質においてあらたな債務の負担行為にも比すべきものであることに鑑みれば、これにより、従前に比して債務者がより不利益となり、債権者がより利益となるような解釈をすべきものとはいえないからである。

 

 

 


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