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「契約書の重要性」と「事前の契約書チェックの重要性」

■ はじめに


 一般的に「契約書は重要」といわれており、そのことは周知されているもかかわらず、契約書の存在・内容を軽視してしまう人(法人)が存在します。

 たしかに、多くの契約は当事者の合意だけで成立する諾成契約です【注1】が、そうだとしても合意に基づいた履行がなされない場合には契約書【注2】の存在・内容が重要となってきます。

 今回は、「契約書の重要性」及び「事前の契約書チェックの重要性」について簡単に説明します。


 【注1】要式契約について

 書面等の作成が必要な要式契約には注意が必要です。例えば、保証契約は、書面(またはその内容を記録した電磁的記録)でしなければ、その効力を生じないことになります(民法446条2項、3項)。

 【注2】契約書のタイトル

 ここでいう契約書とは、実質的な意味での契約書(契約書の効力を有するもの)を意味し、タイトルが「合意書」とか「覚書」などとなっている場合も含みます。

■ 契約書の重要性


1 契約書の作成の重要性

 多くの契約は諾成契約であり、理屈上は口頭の約束でも契約は成立します。しかしながら、現実問題として、重要な契約(大きな取引)を口頭の約束だけで済ませることはまずないでしょう。

 仮に口頭の約束だけだと、後日、当事者の一方が「そのような約束はしていない。契約は成立していない。」と言い出すことがあるでしょう。また、「約束内容は、そうではなく、こうである。」と言い出すこともあるでしょう。

 つまり、その契約の成否に関する紛争や、成立している契約の内容に関する紛争が生じることになります。

 紛争が生じると、通常は当事者間の話し合いによる解決を試みますが、それが無理だとすれば訴訟等によって解決せざるを得なくなります。いずれにしても、紛争解決に要するコスト(時間、労力及び費用等)が発生してしまいます。

 このような無駄なコストをできるだけなくすためには、契約書を作成しておく必要があります。


2 契約書の内容の重要性

 契約書を作成したしても、その内容如何によっては無意味であるどころかマイナスになってしまいます。

 ときどき、契約の相手方から提出された契約書案について、その内容を吟味(確認)することなくサインしている人(法人)も存在しますが、あまりにも危険です。後日、「自分(自社)はそういうつもりではなかった」と主張しても、そのような主張は基本的には通用しません。

 通常は、契約書に表示されている文言(契約条項)を前提に、当事者の合意内容(意味)の解釈(判断)がなされますので、「自分(自社)はそういうつもりではなかった」と主張しても、基本的に裁判では通用しません【注3】。


 【注3】強行規定違反

 もちろん、その契約内容(条項)が、ある法律の強行規定に反しているという主張は可能です。例えば、「公序良俗違反(民法90条)により無効である。」とか、「借地借家法26条、27条、28条、29条、31条、34条及び35条の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものであるから無効である。」とか、「消費者契約法9条1項の規定によって●●の部分は無効である。」といった主張が考えられます。

■ 事前の契約書案のチェックの重要性


 そもそも、契約書は、自分(自社)にとって有利なものであるべきです。もちろん相手方も同様の考えを持っていることから、契約書作成に至るまでの当事者間のやり取り(交渉)が重要となります。

 付言すると、最初に相手方が提出してくる契約書案は、基本的には相手方にとって有利な契約内容となっており、自社にとって不利な契約内容となっているという前提で吟味(確認)する必要があります。盲目的に(確認もせずに)契約書にサインするというのはあまりにも危険です。

 契約書の作成・内容について軽視してしまうと、将来、甚大な損失を被ってしまう可能性もあります。


■ おわりに


 筆者の経験上、契約の成立ないし内容に関する紛争(裁判)の多くは、「口頭の約束で済ませてしまった。」とか「契約書の内容を十分に吟味しなかった。」ということに原因があります。

 その背景には「取引の相手方を疑わなかった(信用してしまった)。」とか「契約書の内容を吟味できる人材がいなかった。」ということがあるようです。

 たしかに、中小企業等においては「契約書の内容を吟味できる人材がいない。」ということもあるかもしれません。

 しかし、契約書の要否やその内容のチェックについては、顧問弁護士にも相談できるはずです。

 もし、「顧問弁護士もいない。」ということでしたら、弁護士との顧問契約を検討されたほうがよいと思われます。



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