• @lawyer.hiramatsu

宅地建物取引業法:宅地建物取引業の無免許営業について

 今回は、以下のようなご質問について検討します。

 当社は、宅地建物取引業の免許を取得している宅建業者です。
 ある個人のお客様から不動産の売却媒介のお話しをいただいたのですが、そのお客様は、不動産の売買(転売)を頻繁になされているようであり、今回も転売の一つのようです。
 当社としては、このようなお客様からのご依頼を断るべきでしょうか。

■ 問題の所在


 宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)12条1項【※1】は、「免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。」と定めており、同規定に違反した者は宅建業法79条2号【※2】の罰則の適用もあります。

 また、宅建業法上禁止されている無免許営業者の取引に、宅建業者が代理又は媒介として関与した場合、当該宅建業者の行為は、宅建業法65条2項5号【※3】や66条1項9号【※4】に該当する(行政処分の対象となる)こともあります。

 そこで、今回のお客様が宅建業法12条1項【※1】の規定に違反するかどうかを検討する必要があります。


■ 免許を受けるべき「宅地建物取引業」とは


 まず、「宅地建物取引業」の定義を確認する必要があります。

 宅建業法2条2号【※5】によれば、「宅地建物取引業」とは「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」ということになります。

 この定義のうち「業として行う」という部分が曖昧であり、実際どういうケースが「業として行う」に該当するのか判然としないでしょう。

この点について、国土交通省が、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の中で、次のような解釈を示しています。

 すなわち、「業として行なう」(「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の原文のまま)とは、「宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする。」という解釈を示しています。ここでいう「次の事項」とは下記のとおりです。

① 取引の対象者
 広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
(注)特定の関係とは、親族間、隣接する土地所有者等の代替が容易でないものが該当する。
② 取引の目的
 利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
(注)特定の資金需要の例としては、相続税の納税、住み替えに伴う既存住宅の処分等利益を得るために行うものではないものがある。
③ 取引対象物件の取得経緯
 転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続又は自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
(注)自ら使用するために取得した物件とは、個人の居住用の住宅、事業者の事業所、工場、社宅等の宅地建物が該当する。
④ 取引の態様
 自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
⑤ 取引の反復継続性
 反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
(注)反復継続性は、現在の状況のみならず、過去の行為並びに将来の行為の予定及びその蓋然性も含めて判断するものとする。
 また、1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして行う宅地の販売等複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。

■ 結論


 上記の判断基準に照らして、今回のお客様の不動産売却が「社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態」にあるようでしたら、お客様は宅建業法12条1項【※1】の規定に違反する可能性がありますので、当社(宅建業者)としても当該取引への関与をお断りするべきでしょう。

 

 【※1】宅建業法12条

(無免許事業等の禁止)
第十二条 第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。
2 第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告をしてはならない。

 【※2】宅建業法79条

第七十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によつて第三条第一項の免許を受けた者
二 第十二条第一項の規定に違反した者
三 第十三条第一項の規定に違反して他人に宅地建物取引業を営ませた者
四 第六十五条第二項又は第四項の規定による業務の停止の命令に違反して業務を営んだ者

 【※3】宅建業法65条

(指示及び業務の停止)
第六十五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許(第五十条の二第一項の認可を含む。次項及び第七十条第二項において同じ。)を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第十一条第一項若しくは第六項、第十二条第一項、第十三条、第十五条第一項若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項若しくは第二項若しくは第八条第一項若しくは第二項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
 一 業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき又は損害を与えるおそれが大であるとき。
 二 業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき又は取引の公正を害するおそれが大であるとき。
 三 業務に関し他の法令(履行確保法及びこれに基づく命令を除く。)に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるとき。
 四 宅地建物取引士が、第六十八条又は第六十八条の二第一項の規定による処分を受けた場合において、宅地建物取引業者の責めに帰すべき理由があるとき。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
 一 前項第一号又は第二号に該当するとき(認可宅地建物取引業者の行う取引一任代理等に係るものに限る。)。
 一の二 前項第三号又は第四号に該当するとき。
 二 第十三条、第二十五条第五項(第二十六条第二項において準用する場合を含む。)、第二十八条第一項、第三十一条の三第三項、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二、第四十八条第一項若しくは第三項、第六十四条の九第二項、第六十四条の十第二項、第六十四条の十二第四項、第六十四条の十五前段若しくは第六十四条の二十三前段の規定又は履行確保法第十一条第一項、第十三条若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項の規定に違反したとき。
 三 前項又は次項の規定による指示に従わないとき。
 四 この法律の規定に基づく国土交通大臣又は都道府県知事の処分に違反したとき。
 五 前三号に規定する場合のほか、宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
 六 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
 七 法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者があるに至つたとき。
 八 個人である場合において、政令で定める使用人のうちに業務の停止をしようとするとき以前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者があるに至つたとき。
3 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは履行確保法第十一条第一項若しくは第六項、第十二条第一項、第十三条、第十五条第一項若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項若しくは第二項若しくは第八条第一項若しくは第二項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
 一 第一項第三号又は第四号に該当するとき。
 二 第十三条、第三十一条の三第三項(事務所に係る部分を除く。)、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二又は第四十八条第一項若しくは第三項の規定に違反したとき。
 三 第一項又は前項の規定による指示に従わないとき。
 四 この法律の規定に基づく国土交通大臣又は都道府県知事の処分に違反したとき。
 五 前三号に規定する場合のほか、不正又は著しく不当な行為をしたとき。

 【※4】宅建業法66条

(免許の取消し)
第六十六条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。
 一 第五条第一項第一号、第五号から第七号まで、第十号又は第十四号のいずれかに該当するに至つたとき。
 二 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当するに至つたとき。
 三 法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当する者があるに至つたとき。
 四 個人である場合において、政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当する者があるに至つたとき。
 五 第七条第一項各号のいずれかに該当する場合において第三条第一項の免許を受けていないことが判明したとき。
 六 免許を受けてから一年以内に事業を開始せず、又は引き続いて一年以上事業を休止したとき。
 七 第十一条第一項の規定による届出がなくて同項第三号から第五号までのいずれかに該当する事実が判明したとき。
 八 不正の手段により第三条第一項の免許を受けたとき。
 九 前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が第三条の二第一項の規定により付された条件に違反したときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。

 【※5】宅建業法2条

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
 一 宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。
 二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
 三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。
 四 宅地建物取引士 第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。

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