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@lawyer.hiramatsu

一部共用部分(区分所有法3条)について~区分所有法11条、14条、16条及び20条との関係~

 今回は以下のような質問について検討します。

 一部共用部分(区分所有法3条【※1】)については、規約の定めをもって広げたり狭めたりすることができますか。
 区分所有法11条2項【※2】は、前項の規定(11条1項の規定)は、「規約で別段の定めをすることを妨げない。」と定めています。
 そうすると、規約の定めによって、一部共用部分の範囲を定めることができるのではないでしょうか。

 【※1】区分所有法3条

(区分所有者の団体)
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 【※2】区分所有法11条

(共用部分の共有関係)
第11条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第27条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第177条の規定は、共用部分には適用しない。

 【※3】区分所有法14条

(共用部分の持分の割合)
第14条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前2項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前3項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

■ 結論

 

 区分所有法3条が規定する一部共用部分とは「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」をいいます。

 「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分かどうかは、建物の構造上及び機能上の見地から判断すべきである。」と解されています(東京地判平成24年9月21日(2012WLJPCA09218007))。

 区分所有法3条が規定する「一部共用部分」に該当するか否かは当該共用部分の客観的性質によって定まるのであって、規約の定めによるものではないと考えるべきです。


■ 検討


 区分所有法11条1項は「共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。」と定めています。

 たしかに、11条2項において、「前項の規定は、規約で別段の定め」をすることができると規定しています。

 しかし、それ(11条2項)は、区分所有法3条が規定する一部共用部分の所有者については規約をもって定めることができるという規定のはずです。

 たとえば、11条2項の規定に基づいて、一部共用部分を区分所有者全員の共有とすることも可能ですが、それにより全体共用部分であった部分が一部共用部分に変化したわけではありません。

 なお、仮に、11条2項の規定を根拠として一部共用部分の所有者を定めた場合には、20条の規定【※4】との関係も問題となりますが、この点については別の機会に論じます。


 【※4】区分所有法20条

(管理所有者の権限)
第20条 第11条第2項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
2 前項の共用部分の所有者は、第17条第1項に規定する共用部分の変更をすることができない。

 そもそも、区分所有法11条【※2】は、旧区分所有法4条【※5】の規定と実質的には変わっていないと解されています(『建物区分所有法の改正』濱﨑恭生著(法曹会、1989年)145頁参照)。

 そして、旧区分所有法4条【※5】に関しては、『建物の区分所有等に関する法律の解説』川島一郎著(法曹時報14巻7・8・9号(昭和37年)掲載)によれば、【※6】のようにいわれていました。

 また、旧区分所有法3条【※7】に関する昭和52年当時の玉田弘毅明治大学法学部教授(当時)の見解は【※8】のようなものでした(判例タイムズ350号144頁参照)。

 さらに、裁判例(東京地判平成24年9月21日(2012WLJPCA09218007)、東京高判平成14年9月30日(判例秘書L05720182))をみても、裁判所は、規約の定め(その解釈)から直接的に一部共用部分該当性を判断しているわけではなく、当該部分の客観的状況等の事実認定を行った上で一部共用部分該当性を判断しています。


 以上の解釈論や裁判例を踏まえると、やはり一部共用部分(区分所有法3条【※1】)は客観的に定まるものであって、規約によって定まるわけではないと考えるべきです。


 【※5】旧区分所有法4条(昭和38年4月1日施行)

第4条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分は、それらの区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第20条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法(明治29年法律第89号)第177条の規定は、共用部分には適用しない。

 【※6】『建物の区分所有等に関する法律の解説』川島一郎著(法曹時報14巻7・8・9号(昭和37年)掲載)より(要旨)

 なお、この規約で定められた所有権は、規約の変更によって所有者を交替させ、規約の廃止によって本条(注:旧区分所有法4条)1項所定の共有の状態に復帰させることができるのは、当然であろう。
 最後に、この所有権の性質について、一言しておかなければならない。共用部分は、本来、本条第1項の規定するように、区分所有者の全員又はその一部の共有に属すべきものであって、本条(注:旧区分所有法4条)第2項が規約でこれと異なる定めをすることを認めたのは、前述のように、その共用部分の維持管理を規約で所有者と定めた者に行わせるためである。従って、そのような規約を設定することは、一種の信託的な所有権の移転を行なうことであって、その結果共用部分の所有者となった者は、その共用部分を管理のために所有するに至るのであり、その背後にはなお本条第1項の規定による区分所有者の共有関係が潜在的に存続しているものと見なければならない。その趣旨は、第16条(注:旧区分所有法)及び第20条(注:旧区分所有法)【※7】の規定からも、窺い知ることができるであろう。

 【※7】旧区分所有法3条、16条、20条

(共用部分)
第3条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第1条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

(共用部分の管理所有)
第16条 第4条第2項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(同条第1項ただし書の共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
2 前項の共用部分の所有者は、規約に別段の定めがない限り、その共用部分につき、保存行為及びその共用部分の性質を変えない範囲内における利用又は改良を目的とする行為を除くその他の行為をすることができない。

第20条 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
2 第5条第2項及び第16条の規定は、前項の場合に準用する。

 【※8】玉田弘毅教授(昭和52年当時)の見解(判例タイムズ350号144頁参照)

 全体共用部分を一部共用部分に、一部共用部分を全体共用部分に、規約で変更できるかどうかであるが、(中略)、多少の疑義がないわけではないが、この場合は、その共用部分を、規約で、全体共用部分から一部共用部分に変更したり、一部共用部分から全体共用部分に変更することはできないと解するのが相当であろう。というのは、その共用部分を共用する専有部分数、区分所有権数、区分所有者数、ないし、それらの範囲は、性質・構造上当然に決まるわけで、規約によって決まるものではなく、したがって、規約により変えることをみとめることは適切ではないからである。23条(筆者注:旧区分所有法23条【※9】)は、そこまでできるとする趣旨ではなかろう。

 【※9】旧区分所有法23条

(規約)
第23条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。ただし、区分所有者以外の者の権利を害することができない。

■ 補足


 マンション管理の現場においては、管理規約にて一部共用部分の範囲が定められていることが少なくありません。

 その規約で定められている一部共用部分(便宜上「規約上の一部共用部分」といいます。)は、区分所有法3条が規定する一部共用部分(便宜上「法定一部共用部分」といいます。)と合致しているケースがほとんどだと思われます。

 ただし、それは法定一部共用部分を規約上の一部共用部分として明確にしているためであって、規約の定めによって全体共用部分を法定一部共用部分に変化させたためではありません。

 そのような理解のもとで、区分所有法11条2項【※2】の解釈(『新版 注釈民法(7)物権(2)』川島武宜・川井健編(有斐閣、2007年)647頁や『コンメンタール マンション区分所有法(第3版)』稻本洋之介・鎌野邦樹著(日本評論社、2015年)79頁)と、14条【※3】、16条【※10】及び20条【※4】の解釈との関係をどのように考えるべきかについてですが、この点については別の機会に論じることとします。


 【※10】区分所有法16条

(一部共用部分の管理)
第16条 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第31条第2項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。

 【※11】区分所有法31条

(規約の設定、変更及び廃止)
第31条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第2項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者又はその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 【※12】区分所有法30条

(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。



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