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マンション管理:管理委託契約に関する暫定契約締結に総会決議は必要か

  • @lawyer.hiramatsu
  • 2022年10月9日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年12月13日

 今回は、以下のようなご質問について検討します。

 私は管理組合の理事長です。当管理組合の管理規約はマンション標準管理規約(単棟型)の内容とほぼ同じです。管理組合の通常総会が近いうちに開催される予定ですが、その通常総会は総会の成立要件(管理規約47条1項)【※1】をみたさない可能性があり、普通決議(管理規約47条2項)【※2】をすることもできません。
 その場合、理事会の決議をもって、管理会社との管理委託契約について暫定契約を締結することは可能でしょうか。

 【※1】管理規約47条1項

 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

 【※2】管理規約47条2項

 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。

■ 検討


1 一般的に、標準管理規約のもとでは、暫定契約を含め管理委託契約の締結は総会決議事項と解されています。

 例外的に、緊急時のやむを得ない対応(例えば、コロナウイルス感染症流行時の対応)として、理事会の決議をもって従前の契約内容と同一内容の暫定契約を締結することも可能であるとはいえるでしょう。ただし、その場合においても、その後、総会を開催できる状況になった場合には遅滞なく総会を開催し、暫定契約についての報告をするとともに、正式な委託契約締結について決議する必要があるといわれています(マンション管理センター『新型コロナウイルス感染拡大における通常総会開催等に関するQ&A(改訂版)』令和4年3月)。


2 ご質問は、通常総会を開催できる状況であるのに、多くの組合員が、総会に出席しない(組合員としては、書面又は代理人によって議決権を行使できる(管理規約47条6項)【※3】のに、それすらしない)ケースのようですが、仮に理事会決議をもって暫定契約を締結したとしても(その暫定契約締結が必要やむを得ない対応であると判断される場合であったとしても)、その後の総会開催が不要になるわけではありません。結論としては、理事会決議のみでは足りない、ということになります。


 【※3】管理規約47条6項

 前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

3 そもそも、多くの組合員が総会に出席しない(書面又は代理人によって議決権を行使することもしない)ということは、多くの組合員が現在の理事会等に対し不満を持っている可能性(潜在的には反対の意向の可能性)もあり得ます。そうだとすると、仮に理事会の判断だけで管理委託契約の締結や収支予算・事業計画を実行してしまうと、その後、組合員との間で紛争が生じる可能性もあります。

 ご質問は、これから通常総会が開催されるということなので、まずはその総会の成立要件がみたされるよう、組合員の協力を求める(書面又は代理人によって議決権を行使するよう求める)ほうがベターです。

 

 

 


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