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  • @lawyer.hiramatsu

マンション管理(区分所有法):規約事項について〔マンション標準管理規約(単棟型)23条の規定をもとに〕

 今回は、以下のような設例(以下「本件」といいます。)について検討します。

 私たちのマンションの管理規約には、マンション標準管理規約(単棟型)23条の規定【※1】と全く同じ規定が存在します。
 管理組合は、ある共用部分の補修工事(総会決議済み)を行う必要があるのですが、その工事を実施するためには、特定の専有部分内部を使用する必要があります。
 管理組合側は、管理規約23条1項【※1】に基づいて、当該専有部分への立入りを請求することができると考えています。
 これに対し、上記専有部分の区分所有者は、管理組合に対し「償金」の支払を求めています。
 ①管理規約23条【※1】を確認しても「償金」の支払義務に関する規定はありませんが、この場合に管理組合は区分所有者に対し「償金」の支払義務があるのでしょうか。
 ②仮に、管理規約において「償金」の支払義務がない旨を明確に定めていた場合はどうなりますか。

 

 【※1】マンション標準管理規約(単棟型)23条

(必要箇所への立入り)
第23条 前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
5 立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。

 

■ はじめに


 ①本件の管理規約においては「償金」の支払義務に関する規定がありませんが、この場合に「償金」の支払義務が発生するのか(以下「①のケース」といいます。)、②仮に、管理規約において「償金」の支払義務がない旨を明確に定めていた場合はどうなるのか(以下「②のケース」といいます。)に分けて、以下検討します。

  

■ ①のケース

 

 区分所有法6条2項は、区分所有者に当然に認められる使用請求権を定めています【※2】。

 

 【※2】区分所有法6条

(区分所有者の権利義務等)
第6条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
4 民法(明治29年法律第89号)第264条の8及び第264条の14の規定は、専有部分及び共用部分には適用しない。

 

 区分所有法6条2項の使用請求権は、区分所有法により当然に認められる法定の請求権であって、規約によっても排除できないと解されています。

 もちろん、管理規約23条1項の規定は区分所有法6条2項の請求権を排除しているわけではありませんので、その関係において、管理規約23条1項の規定が区分所有法6条2項に反し無効となるわけではありません。

 ところで、管理規約23条【※1】には、区分所有法6条2項が定める「償金」についての規定が見当たりません。

 そのため、本件管理規約23条が償金の支払義務を否定する趣旨(区分所有者の償金請求権を排除する趣旨)であるのかどうか問題となりますが、結論として、償金の支払義務を否定する趣旨とは解されません。

 詳述すると、管理規約23条1項が定める請求権は、区分所有法6条2項の規定を前提として、管理組合(区分所有者により組織される団体)による管理(【※3】【※4】)を円滑に行うために設定されたものといえますので、区分所有法6条2項により認められる「償金」も前提として設定されたものといえます。つまり、本件管理規約23条は、償金の支払義務を否定する趣旨のものとは解されません。

 したがって、管理組合は、区分所有者に対し、区分所有法6条2項と同じ性質の「償金」を支払わなければならないでしょう。

 ただし、区分所有者側は、償金の支払がないことを理由として、管理組合側の立入りを拒むことはできない(管理組合側の立入り請求権と区分所有者側の償金請求権とは同時履行の関係に立つものではない)と解されます。

 

 【※3】マンション標準管理規約(単棟型)21条

(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
3~6(省略)

 【※4】マンション標準管理規約(単棟型)22条

(窓ガラス等の改良)
第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
2、3(省略)

■ ②のケース

 

 仮に管理規約において「償金」の支払義務がない旨を明確に定めていた場合はどうなるでしょうか。

 結論として、そのような規約の定めがあったしても、償金(区分所有法6条2項の償金と同じ性質のもの)の支払義務を免れるものではないと解されます。

 前述したように、管理規約23条1項が定める請求権は、区分所有法6条2項の規定を前提として、管理組合による管理(【※3】【※4】)を円滑に行うために設定されたもののはずです。そうであるのに、区分所有法6条2項の「償金」の支払義務を否定すること(損害を受けた区分所有者の償金請求権を剥奪すること)は区分所有法6条2項に反しており、規約事項(区分所有法30条1項)【※5】として認められないといえます。

 つまり、償金の支払義務がない旨の規約の定めがあったとしても、区分所有者は、管理組合に対し、償金(区分所有法6条2項と同じ性質のもの)の支払を請求することができますので、その意味で当該規約の定めは無効といえます。

  

 【※5】区分所有法30条

(規約事項)
第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

■ おわりに

 

 規約で定めることができる事項すなわち規約事項に関する問題(区分所有法30条1項の問題)、そして規約事項に該当するとしてもその限界に関する問題(区分所有法30条3項の問題)は、実際に各マンションで規約の設定や変更等(区分所有法31条【※6】)を行う際に潜在的又は顕在的に関係してくる問題です。

 区分所有法31条【※6】が極めて重要な規定であることは周知されていますが、区分所有法30条1項や区分所有法30条3項に反する場合にも、その規約の定め自体が無効となりますので注意が必要です。

 

 【※6】区分所有法31条

(規約の設定、変更及び廃止)
第31条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第2項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者又はその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 

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